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つれづれ

ご銘

お茶の中では「ご銘」の付いた器物などが何種類かある。
茶壷、花入、茶杓、茶碗、茶入、棗、抹茶、お菓子、香等には銘がある。
亭主の心入れで客のために用意したものであれば、聞いて差し上げるのが礼に叶っている。

銘としては季節、事象、人事、人名、風物、草木等々凡そは俳句の季語集が便利に使えるが、主客共に研鑽していないと茶道と言う面白みが半減するのではなかろうか。和歌より取られたご銘もあり「歌銘」と言います。お菓子でも「唐衣」等は業平東下りの和歌の中から取られたものです。

この中から何例か挙げてみる。
「泪」「ゆかみ」・・利休が古田織部と細川三斎に送別で送った茶杓の銘で、各々徳川美術館と永静文庫に伝わるあまりに有名な茶杓である。「ゆかみ」は「ゆがみ」で茶杓を上から見ると少し曲がっている。
「判官、弁慶」・・義経に因んだ仙叟の茶杓銘
他には「如意」「長閑」「茶の心」「道しるべ」「三猿」等は無季節
「春雨」「早梅」「花の宿」「帰雁」「早乙女」「夏月」「深緑」「虹」「白露」「朝寒」「時雨」「霜夜鶴」「枯野」「福の神」
以上は歴代宗匠方のご銘の中からピックアップ。

茶碗のご銘では「大黒」は楽茶碗の祖長次郎作に利休の銘です
「再来」「氷室」「夕暮」「玉蔓」「冬牡丹」珍しい例では「門外不出」「蠣殻」「南極」「カタツムリ」等があります

茶入では「好日」「年忘」「岩根」「音羽」「鉄牛」「烏羽玉」「川渡」
宗匠の銘ではありませんが「初花」「遅桜」「九十九茄子」等々

花入の有名なものでは「園城寺」「面影」は竹一重切花入。「達磨」「雪消の筧」は瓢や陶器製
面白いものでは玄々斎の銘で「龍馬」がありました。玄々斎は幕末から明治にかけての裏千家十一代宗匠であれば、当時国を揺るがした坂本龍馬の銘を付けられた心を伺いたいところです。尚、徳川の幕臣の三河国奥殿領主大給松平家より裏千家に養子に入った方。兄は今に半蔵門の名前を残す渡辺半蔵であり、宗匠になられた後は名古屋城主徳川斉荘の茶道指南をされていますので、そのような事を知ると尚更の事です。

主菓子には必ず銘があります。これは菓子屋で上生菓子をみれば、季節の菓子がならび、銘が書いてありますので、ご存知の方も多いと思います。
初心者教室では季節毎に「秋の山路」「亥の子餅」「紅葉」「銀杏餅」「淡柚」「寒菊」他に「真味糖」(裏千家十四代淡々斎好み銘)「柿寿楽」「薄氷」「紫野」・・・来週は「雪だるま」新年は「はなびら餅」等々

抹茶は宗匠好みは勿論、必ず銘があります。
初心者教室では鵬雲斎好みご銘「苔の白」「涛声の白」「松柏」を使用しています。「○○白」は薄茶を指します。

棗の銘に「黄鐘」がある。円能斎の十二ヶ月の棗の一つで、蒔絵は寒牡丹。「黄鐘」とは中国の各月の別称で11月を指す。寒牡丹は別名「復月」で冬至からは陰から陽へ変わる事を意味している。円能斎は明治時代の方ですが、昔は陰暦なので年によっては丁度このあたりで春を迎えたようです。古い歌に「年の内に春はきにけり・・・」があり、今年と言って良いやら昨年と言って良いやらとぼやきのような和歌ですが、このようにあらゆる事を学び銘を付けてあれば、受ける側もそれなりに学ばなければと思う次第です。
by higashinuma | 2010-12-13 18:25 | 茶道 | Comments(0)

茶道をとおして日々の流れをつづる

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